レーザー尿失禁治療とは

 

レーザー尿失禁治療の歴史~開発からフィレンツエ会議まで

はじめに

レーザー尿失禁治療は、当初膣から行う膣レーザーとしてヨーロッパで始まりました。それは、よこすか女性泌尿器科のホームページに記載されているフィレンツエ会議を主催したMarco Gambacciani教授がイタリア(ピサ大学)が、それまでにあったStefano Salvatoreによる独創的な論文の改良したものです。

Stefano Salvatore et の研究では、マイクロアブレーション二酸化炭素(CO 2)レーザーによる治療が閉経後の女性の膣健康改善を誘発したことを明確に示しました。そこで、その技術を尿失禁にまで応用するには、第2世代の革新的な膣レーザーが必要であった。その条件をみたしたのは、フォトナ社の開発したレーザーです。これは、波長2940 nmのエルビウムによるイットリウムアルミニウムガーネット(Er:YAG)レーザーとSMOOTH™テクノロジーがあってはじめて成功したといえます。これはVELと命名されています。

そこで、治療適応患者の研究と臨床効果の長期モニタリング研究、さらにはオペレーターのトレーニングが不可欠であると考え、Marco Gambaccianiは、8年前にVaginal Erbium Laser Academy(VELA)を発足しました。3年前から日本の奥井伸雄が参加し、世界的に専門医が集まり、治療の結果と研究について発表し、議論をしています。

特に2019年11月にフィレンツェで開催された第5回VELAミーティング(フィレンツェ会議)はコロナウイルス・パンデミック前での大規模集会で、過去最大の発表がありました。このプレゼンテーションすべてが、医学誌Climactericに投稿され最優秀5演題のみが論文として認められた。このような学会の発表をすべて査読され、通常の会議議事録よりも堅固な国際ジャーナルを作り上げる仕組みは、かってない試みです。それは、VELが、国際的に認められるために必須のプロセスであるとGambacciani教授は考えています。

レーザーよる尿失禁治療の臨床の発展

 

腹圧性尿失禁SUIのレーザー治療の目的は、尿道下ハンモックと周囲の支持筋膜の結合組織を強化することです。現在までに、SUIにおけるVELとCO2レーザーの両方の有効性を評価する19の研究論文があり、主にVELが使用されています。これら論文の大多数は、3〜6か月のフォローアップを伴う小規模な前向き観察研究またはケースシリーズです。この中で、医学に大変大きな業績とされているのは、以下の論文です。

1   奥井(日本)によるもの (2019年)

SUIのスタンダートな術式である mid-urethral sling と比較した後ろ向き論文

Comparison between erbium-doped yttrium aluminum garnet laser therapy and sling procedures in the treatment of stress and mixed urinary incontinence.
World J Urol. 2019 May;37(5):885-889. doi: 10.1007/s00345-018-2445-x. Epub 2018 Aug 16.

2 エレル教授(トルコ)によるもの(2020年)

TVT/TOT手術後の尿失禁非改善例に対してVELの効果をみた後ろ向き論文

Er:YAG laser treatment of urinary incontinence after failed TOT/TVT procedures.
Erel CT, Fernandez LDC, Inan D, Makul M.
Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2020 Sep;252:399-403. doi: 10.1016/j.ejogrb.2020.07.010. Epub 2020 Jul 9.

3 オリーリー教授(アイルランド)によるもの(2021年)

前向きRCT試験によりレーザー尿失禁治療の効果と安全性をみたもの

Vaginal erbium laser for SUI – A prospective multicentre randomized placebo-controlled trial to evaluate efficacy and safety of non-ablative Er:YAG laser for treatment of stress urinary incontinence (SUI)

ICS 2021 Programme S18  Abstract 218

4 ガスパー教授(アルゼンチン)によるもの(2017年)

尿道に直接のレーザーを照射することによる尿失禁の改善。ガスパー教授はこのほかに数々の論文をかいています

Non-ablative erbium YAG laser for the treatment of type III stress urinary incontinence (intrinsic sphincter deficiency). Lasers Med Sci. 2017 Apr;32(3):685-691. doi: 10.1007/s10103-017-2170-5. Epub 2017 Feb 16.

5 ガンバッチャーニ教授(イタリア)によるもの(2020年)

過去におこなわれたすべてのVELの統計をとることで、安全性について検証をしました

Safety of vaginal erbium laser: A review of 113,000 patients treated in the past 8 years

Climacteric. 2020;23(sup1):S28-S32. doi: 10.1080/13697137.2020.1813098.

追加 今後に期待できる研究:ヒラード教授(英国)

膣レーザーをSUIの低侵襲介入と見なすと考えた英国の研究。2つランダム化試験 (VESPER-SUI 試験)

日本でのVELの紹介

日本の報道機関により正確な情報を監修のもと報道をされた。レーザー尿失禁治療に対する誤解をうまないために、各報道機関には慎重に情報提供するように監修されていただきました。あらためてお礼をもうしあげます

毎日新聞2017年

日本経済新聞グループ(ニッケイヘルス)2020年

BS朝日 『スゴ腕ドクター』

TBS 『元気の時間』

レーザー尿失禁治療の効果についての論文

レーザー尿失禁治療が、どの程度の効果があるのか?それは、査読付き国際論文を比較することで、グローバルに理解できます。

最初に、国際論文では腹圧性尿失禁を次のように分類します

腹圧性尿失禁は、膀胱頸部と尿道が適切に閉じることができない場合に発生します。これら尿道などの構造が下に移動し、弱くなった骨盤底の筋肉を通って膨らむ(ヘルニアになる)とき、それらは過可動性であると言われます 。ヘルニア、または 膀胱瘤は、尿道の角度を変化させ、尿道を開いたままにして尿を漏らします。腹圧性尿失禁には3つの分類があります。

タイプI  SUI I 膀胱頸部と尿道は開いており、わずかに可動性が高く、ストレスがかかると尿道は2cm未満下に移動します。I型患者は膀胱瘤の兆候がほとんどまたはまったくありません。

タイプ II  SUII II ダウン以上2センチメートルより膀胱頸部および尿道が閉じられるとhypermobileといいます。膣内に膀胱瘤がある患者は、IIA型腹圧性尿失禁といいます。膀胱瘤が膣の外側にある場合、それはタイプIIBとといいます。

タイプIII(重度)SUI III  –尿道括約筋は非常に弱い場合です(内因性括約筋欠損症と呼ばれます)。

また、腹圧性尿失禁だけの場合は、SUI. 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が同時にある場合は MUIといいます。

 

Erbium:YAG laser treatment of female stress urinary incontinence: midterm data.
Kuszka A, Gamper M, Walser C, Kociszewski J, Viereck V.
Int Urogynecol J. 2020 Sep;31(9):1859-1866. doi: 10.1007/s00192-019-04148-9. Epub 2019 Dec 11.

59人の腹圧性尿失禁SUIの女性 (32人がSUI I、16人がSUI II、11人がSUI III):プロトコールは、膣のみにレーザーを照射。客観的(1時間パッドテスト)および主観的データ(失禁質問票に関する国際協議-尿失禁ショートフォーム[ICIQ-UI SF])での評価。軽度のSUI Iの客観的な治癒/改善率は、6か月および2年のフォローアップで2、4、および5回のレーザーセッション後に69%、78%、91%、および78%でした。SUI IIの場合、客観的な治癒/改善率は、31%、63%、69%、および50%でした。SUI IIIの場合、2回および4回のレーザーセッション後に1人の患者のみが客観的な改善を示しました。

 

Er:YAG laser in hysterectomized women with stress urinary incontinence: a VELA retrospective cohort, non-inferiority study.
Erel CT, Fistonić I, Gambacciani M, Oner Y, Fistonić N.
Climacteric. 2020;23(sup1):S18-S23. doi: 10.1080/13697137.2020.1814728.

トルコ、クロアチア、イタリアで実施された後ろ向きコホート研究では、35人の子宮摘出患者と34人の非子宮摘出患者のSUI. 子宮摘出患者では、ICIQ-SFが5ポイント減少し(95%信頼区間3–8; p  <0.001)、45%減少しました(95%信頼区間36–67%)。ベースラインのICIQ-SFと5つの共変量を調整した後、子宮摘出群の症状の軽減は、子宮摘出されていない群の症状の軽減よりも劣っていませんでした。この論文は、レーザー尿失禁治療が苦手とされた子宮摘出後でも効果があるとしています。ICIQ-SFが、治療前が12から14ポイントであるのが、治療後に4から6ポイントはどうゆうれべるでしょうか?それは、別の論文ではっきりします。

 

Comparison between erbium-doped yttrium aluminum garnet laser therapy and sling procedures in the treatment of stress and mixed urinary incontinence.
Okui N. World J Urol. 2019 May;37(5):885-889. doi: 10.1007/s00345-018-2445-x. Epub 2018 Aug 16.

この論文では、中部尿道スリング(TVTとTOT)とレーザーを比較しております。それぞれ50人にしています。毎月レーザー尿失禁治療を3か月行い、1年後の成果をみています。そこで、ICIQ-SFは、レーザーの治療前が10から12ポイント。治療後が、2ポイント(標準偏差では6ポイントと幅があります)。これは、その後に、発表されたトルコのErel CT教授とまったく同じです。この場合の尿パッドテストは、治療前が33g前後であったのが、2から4gになっています。

Fig. 1

Vaginal erbium laser for SUI – A prospective multicentre randomized placebo-controlled trial to evaluate efficacy and safety of non-ablative Er:YAG laser for treatment of stress urinary incontinence (SUI) O’Reilly B, Phillips C, Toozs-Hobson P, Kuhn A, Vierek V, Athenasiou S, Lukanovic A, Lukanovic D, Palmer B, Dahly D, Koron N, Cardozo L ICS 2021 Programme S18 Abstract 218

前向きランダム試験の報告です。患者によって差がありますが、右のアクティブと書いてあるグループ(57人)が結果を意味します。2回のレーザーを実施して半年後の解析です。対数Logで表記してあるので、わかりにくいのですが、Log5というのは50g以上、log-5というのは、ほぼ0を意味します。

Comparison of urethral sling surgery and non-ablative vaginal Erbium:YAG laser treatment in 327 patients with stress urinary incontinence: a case-matching analysis.
Okui N, Miyazaki H, Takahashi W, Miyauchi T, Ito C, Okui M, Shigemori K, Miyazaki Y, Vizintin Z, Lukac M. Lasers Med Sci. 2021 Apr 22. doi: 10.1007/s10103-021-03317-x. Online ahead of print.

この研究では、メッシュによる尿失禁手術とレーザー尿失禁治療の違いがはっきりわかります。メッシュの手術の場合は、手術直後から尿失禁がなおりますが、レーザー尿失禁治療は細胞が再生するまで時間がかかるので、最初の3か月では効果が十分でないです。6か月待つと効果が出てきます。なお、尿失禁が治るレベルですが、レーザー尿失禁では、術前が30g前後であったものが、6か月で2から6g前後になっております。

またICIQ-SFについても、過去の論文と同様に、治療前が12ポイント前後であったものが、2から4ポイントになります。

Predictive factors for the efficacy of Er:YAG laser treatment of urinary incontinence.
Erel CT, Inan D, Mut A.
Maturitas. 2020 Feb;132:1-6. doi: 10.1016/j.maturitas.2019.11.003. Epub 2019 Nov 9.

どのような人がレーザー尿失禁治療の効果があり、どのような人がないかについてのリスクを計算しています。42人の患者がSUIを持ち、40人の患者がMUIという条件の研究。年齢が若い女性は有意に良い結果(p <0.008)。閉経前の女性(p <0.032)と閉経後の初期の女性(p <0.032)もEr:YAGレーザー治療に対して陽性反応を示しました。BMIが低い女性はより大きな改善が見られました(p <0.011)。セッション中の総レーザーエネルギー消費量も、UI​​のEr:YAGレーザー治療の成功の予測パラメーターとなる可能性があります(p = 0.059)。以上から、レーザー尿失禁の効果に影響があるのは、年齢、肥満、閉経であるといえます。

 

Non-ablative erbium YAG laser for the treatment of type III stress urinary incontinence (intrinsic sphincter deficiency).
Gaspar A, Brandi H.
Lasers Med Sci. 2017 Apr;32(3):685-691. doi: 10.1007/s10103-017-2170-5. Epub 2017 Feb 16.

タイプIII型ストレス性尿失禁(内因性括約筋欠損症)の治療が目的。バルサルバリークポイント圧力が60cm H2O未満の22人の患者。尿道の全長内に低フルエンスパルスを照射する非切除エルビウムレーザーで、治療は、3週間の間隔を置いた2回の治療セッション。

 

Effect of non-ablative laser treatment on overactive bladder symptoms, urinary incontinence and sexual function in women with urodynamic stress incontinence.
Lin YH, Hsieh WC, Huang L, Liang CC.
Taiwan J Obstet Gynecol. 2017 Dec;56(6):815-820. doi: 10.1016/j.tjog.2017.10.020.

平均年齢52.6±8.8歳の30人の患者。2回のエルビウム:YAGレーザー治療。治療の3か月後、平均1時間のパッドテストは有意に減少(P = 0.039)。下の表のように、1時間パッドテストが13gから6gに減少をみとめている。

(n = 30) Mean ± SD P0vs3 P0vs12
Before Tx 1 m Later 3 ms After Tx 12 ms After Tx
1-hr Pad test (g) 13.2 ± 17.7 9.7 ± 15.1 6.1 ± 11.6 0.039
OABSS 8.2 ± 5.0 7.1 ± 2.1 6.1 ± 4.3 7.9 ± 6.0 0.027 0.576

 

 

よこすか女性泌尿器科のホームページから知識を

よこすか女性泌尿器科のホームページでは、レーザー尿失禁のことが多角的にわかります

まずは、最新の論文をわかりやすく書いたまとめです

医学情報誌VIEW 『レーザー尿失禁論文特集』

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