メッシュトラブル(メッシュ抜き取り手術)の解説【当院の7つの海外論文】

メッシュトラブル

メッシュトラブル

疾患の特徴 生活の質QOLに著しい障害を与えます。大変残念なことに、骨盤臓器脱・腹圧性尿失禁に挿入するポリプロピレンメッシュが実際に用いられた直後に、製造元の会社ではデータが確認されていたのにかかわらず、メッシュトラブルがあることが分かったのは、およそ7年ほど経過した時点です。2013年にJAMA誌にて、2002年から2005年にかけての米国内223人の比較試験をシカゴにあるユタ大学Nygaard教授が発表。その内容は、メッシュ手術を腹式おこない骨盤臓器脱の手術をおこなっても、時間とともに再発し、7年もたつと34から48%の再発が認められるとしたものでした。また、7年後のメッシュびらんは、10.5%であるとされました。当時この論文は、ジョージタウン大学Iglesia教授は『臨床的に重要なことで、腹式のメッシュ手術が、標準手術に位置付けるのは疑問』とされたが、実際の臨床では尊重されずメッシュ手術が継続しました。当院は、2013年に日本女性骨盤底医学会にメッシュの感染症の報告をしました。その後、英国医学雑誌に取り上げられたオックスフォード大学によるメッシュの教訓というの論文もあり、英国スコットランドではメッシュの発売が禁止になりました。日本では当院奥井医師が2017年に毎日新聞にて女性特有の「骨盤臓器脱」最適な治療法はという特集を発表しましたが、当時の日本の反響はごく一部の患者にか届きませんでした。2019年には米国政府FDAが米国内でのメッシュの発売を中止を発表しました。イギリスBBC放送は、メッシュのトラブルを定期的に特集していて、鎮痛剤なしでは過ごせない人、性行為が不可能なひと、腰痛がある人、出血がある人、膣から腐ったにおいのある人など具体的なトラブルをあげています。当院は、なかなか日本でメッシュ問題が認知されない現状を鑑み、『ようこそ女性泌尿器科クリニックへ ~世界が警告、骨盤臓器脱メッシュはこんなに危険』(ハート出版)を出し、これ以上のトラブルをかかえる女性が出ないように患者様ご自身でもう一度立ち止まって考えてくださるように啓発をしています。

症例報告

原因 人工メッシュのアレルギーによるもの、手術手技によるものがあります。メッシュのアレルギーによるものは、遅発性アレルギーなので時間をかけて骨盤内やメッシュ挿入部に膿をためていきます。写真の場合は、メッシュの挿入により子宮の周囲と子宮に炎症を起こしたケースです。

挿入したメッシュの先が、膿をためていく場合もあります。この場合は、メッシュの先端の部分に膿がたまります。

これらのように感染がどこにおこるかわからないたに、症状が多彩になります。膿が足の筋肉のそばにあれば、立位のときの下腹部のさされるような痛みなるなどの症状をおこします。

メッシュを挿入した直後から出てくる場合は、体重が骨盤にどのように力がかかるかを誤解して挿入したケースです。多いのが腹痛と腰痛です。骨盤臓器脱にはもともと体重がかかる癖がつく傾向にあります。立位で過ごしていると、落ちてくるというのはそのためです。それをメッシュで支えるのですから、挿入部分や固定部分に痛みがでるのは当然と考えられます。しかし、この腹腔鏡でメッシュを抜く行為は、癒着と炎症を招きやすく、しかし、メッシュが入っていると痛みが持続するという具合にジレンマに陥ります。

 

診断 デジタル膀胱内視鏡検査:膀胱内にメッシュがでている場合がありますので、内視鏡で観察が必要です。多いケースは、尿道にメッシュが出ている場合、膀胱前壁と頂部の間にメッシュが出ている場合です。子宮鏡、直腸鏡が必要な場合もあります。MRI検査では、括約筋の鮮明な画像を提供して、筋肉が無傷かどうかを判断します。メッシュが炎症をおこした筋肉は、多くは血流動態が停滞して、断裂像が認められます。

 

治療 不快でQOLを下げますので、積極的治療を行う必要があります。しかし、安易な手術ができません。まず、MRIと様々な検査からメッシュの摘出範囲を決めます。理想的には、メッシュをすべて取り去ることがよいのですが、そのために組織を挫滅させてはいけません。

メッシュトラブル

このメッシュは摘出されたもので、上の半分が膀胱、下の半分が直腸をささえていました。そして、このメッシュにより、子宮と直腸の間の部分が膿がたまっていました。このような場合は、最初の手術でできるかぎりのメッシュ摘出を行い、その後、組織に細菌がいなくなった時期をみて組織の修復をおこないます。その2回目の治療は、保険診療で膀胱脱手術をやり直しになる場合もありますし、自費診療に切り替えてレーザー治療をする場合もあります。

 

世界の注目点 世界的な注目点はメッシュのトラブルをどのように修復するかという点になってきています。摘出手術に困難がありますので、定型的な方法を探そうというわけです。

当院の7つの国際論文

 

論文1

日本語題名: 中部尿道スリング手術後の合併症に対する非切除型エルビウム(YAG)レーザー治療の可能性:ナラティブレビュー
英語題名: The Potential of Non-ablative Erbium (YAG) Laser Treatment for Complications After Midurethral Sling Surgery: A Narrative Review
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解説:
中部尿道スリング手術は、尿失禁治療に効果的な方法として広く行われていますが、術後に尿失禁の持続、メッシュの露出、痛みなどの合併症が問題となることがあります。これらの合併症に対する従来の外科的治療法は侵襲的であり、治療抵抗性や再発の問題が残ります。本論文では、非切除型エルビウム(YAG)レーザー治療がこれらの合併症に対して持つ可能性について検討しています。レーザー治療は、組織の切除を伴わないため、侵襲性が低く、安全性が高いとされています。この新しい治療法がどのようにして合併症の管理に役立つかをナラティブレビュー形式で紹介しています。


論文2

日本語題名: 骨盤臓器脱出症におけるポリプロピレンメッシュ除去のための経膣自然孔経腔内内視鏡手術技術:症例報告
英語題名: Minimally Invasive Vaginal Natural Orifice Transluminal Endoscopic Surgery Technique for Successful Polypropylene Mesh Removal in Pelvic Organ Prolapse: A Case Report
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解説:
骨盤臓器脱出症の治療にはポリプロピレンメッシュの挿入が必要ですが、痛みや感染症などの合併症が生じることがあります。この症例報告では、経膣自然孔経腔内内視鏡手術(NOTES)を用いたポリプロピレンメッシュの除去方法について述べています。この技術は、従来の外科手術よりも侵襲が少なく、回復が早いことが特徴です。症例報告として、特に難治性の合併症を持つ患者に対して成功裏に行われた手術の詳細を紹介し、この新しい手術技術が骨盤臓器脱出症の治療にどのように役立つかを示しています。


論文3

日本語題名: 腹腔鏡下仙骨膣固定術におけるポリプロピレンメッシュ合併症の病理学的洞察:症例シリーズ
英語題名: Pathological Insights on Polypropylene Mesh Complications From Laparoscopic Sacrocolpopexy: A Case Series
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解説:
腹腔鏡下仙骨膣固定術は骨盤臓器脱出症の治療に広く用いられていますが、術後にメッシュの痛みや感染が発生し、メッシュの除去が必要になることがあります。この症例シリーズでは、メッシュ合併症の病理学的側面について検討しています。患者はメッシュの固定状態に基づいて分類され、意図しないメッシュの重なりがどのように合併症を引き起こすかを分析しています。本論文は、メッシュ合併症の理解を深め、より安全な手術方法の開発に貢献することを目的としています。


論文4

日本語題名: ポリプロピレンメッシュによる膣侵食に対する非切除型エルビウムYAGレーザー治療の評価:症例シリーズ
英語題名: Evaluating Non-ablative Erbium Yttrium Aluminium Garnet (YAG) Laser Treatment for Polypropylene Mesh-Induced Vaginal Erosion: A Case Series
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解説:
ポリプロピレンメッシュが原因で膣侵食を引き起こすことがあり、高齢の女性にとって深刻な問題となります。本症例シリーズでは、非切除型エルビウムYAGレーザー治療がこれらの膣侵食に対してどのように効果を発揮するかを検討しています。研究対象は平均年齢73.2歳の女性9人で、全員がポリプロピレンメッシュ手術を受けた後に膣侵食を経験しています。レーザー治療の結果、症状の改善が見られ、手術の侵襲性が低いため、安全かつ効果的な治療法として期待されています。


論文5

日本語題名: 中部尿道スリング手術後の痛みに対するメッシュ除去手術とレーザー治療:症例シリーズ
英語題名: Mesh Extraction Surgery and Laser Treatment for Pain After Mid-Urethral Sling Surgery: A Case Series
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解説:
中部尿道スリング手術は、尿失禁治療において一般的な方法ですが、術後に痛みが生じることがあります。この症例シリーズでは、術後の痛みに対するメッシュ除去手術とエルビウムYAGレーザー治療の効果について検討しています。症例は複数の患者にわたり、メッシュ除去手術と併用されるレーザー治療の効果が評価されました。結果として、レーザー治療は痛みの軽減に有効であり、侵襲が少ないため、術後合併症の管理における有望な治療法として位置づけられています。


論文6

日本語題名: ストレス性および混合性尿失禁の治療におけるエルビウムドープイットリウムアルミニウムガーネットレーザー療法とスリング手技の比較
英語題名: Comparison between erbium-doped yttrium aluminum garnet laser therapy and sling procedures in the treatment of stress and mixed urinary incontinence
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解説:
日本では、尿失禁の治療にテンションフリーヴァギナルテープ(TVT)やトランスオブチュレータータペ(TOT)スリング手技が一般的に用いられますが、これらの手技には人工メッシュの使用に伴う問題があります。本研究では、ストレス性および混合性尿失禁の治療において、エルビウムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Er

)レーザー療法とスリング手技を比較しています。レーザー療法は非侵襲的であり、手術による合併症を避けることができるため、新しい治療法として注目されています。


論文7

日本語題名: 膀胱瘤に対するポリプロピレンメッシュ手術後の過活動膀胱症候群の改善
英語題名: Improvements in overactive bladder syndrome after polypropylene mesh surgery for cystocele
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解説:
膀胱瘤の治療にはポリプロピレンメッシュ手術が行われることが多いですが、術後に過活動膀胱症候群(OAB)が改善されるかどうかは明らかではありません。本研究では、膀胱瘤に対するポリプロピレンメッシュ手術がOABに与える影響について検討しています。34名の女性を対象に、手術前後のOAB症状スコア(OABSS)、最大尿流量(Qmax)、排尿後残尿量(PVR)を評価しました。その結果、OAB症状の改善が確認され、ポリプロピレンメッシュ手術が過活動膀胱症候群の管理に有効であることが示されました。

 

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メッシュ摘出は、膣健康状態の改善につながります。摘出だけでも50%の改善が報告されます。(カリフォルニア大学)

英国と米国では膣メッシュは販売されていません。この時からメッシュ摘出の技術を世界各地で取り組み始めたとかんがえます。

 

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