尿失禁のタイプにより適応と非適応がある
腹圧性尿失禁には、日本的には、2つのケースがあります。
一つは、恥骨から尿道までの靭帯・筋膜が損傷することで、尿道が膣側に落ちてくるもの。これは尿道瘤という外見をしめします。尿道が過剰に移動するようになりますので、尿道過可動といいます。この場合は、TVT手術という人工テープを挿入する治療が効果的です。
もう一つは、尿道そのものが弱ってしまうことです。尿道は幅が1cm前後という薄い組織ですが、その中に筋肉があります。この筋肉が弱くなる現象で、見た目では尿道が細くなっているのがわかります。これを、内尿道括約筋不全といいます。これは、TVT手術を適応としてよい場合と、そうでない場合があります。
TVT手術の実際
図のように人工メッシュによるポリプロピレン・テープを挿入する方法は2種類があります。ひとつは、おなかにテープを出すTVT手術です。もうひとつは、足の付け根にテープをだすTOT手術(海外ではTVT-O手術といいます)です。
治療成績は、2020年ごろから複数の論文がでてきており、現在のところTVT手術のほうが安定して尿失禁を抑えると考えられます。これについては、以下のYouTubeに解説を準備しております。
手術は、日帰り手術です。手術時間は60分前後で、午前中に行い平均的には午後2時にみなさまお帰りになります。翌日点滴に受診におこしになる必要があります。出血量はほとんどありませんが、まれに静脈瘤という静脈の病気が尿道の両脇にあるひとは出血します。それでも、100ml以下で終わります。
よこすか女性泌尿器科のホームページからチェック!
奥井医師が長年膀胱脱に取り組んできたので、当院ホームページにはたくさんの資料があります。どれも、イラスト豊富な腹圧性尿失禁の解説です。
腹圧性尿失禁1 いろいろな尿失禁
腹圧性尿失禁2 (切迫性尿失禁)
腹圧性尿失禁3 (いつりゅう性尿失禁)
腹圧性尿失禁4 (機能性尿失禁)
腹圧性尿失禁5 骨盤底筋体操
腹圧性尿失禁6 膀胱訓練と排尿日誌
腹圧性尿失禁7 保険認可手術
妊娠を希望する人でも、以前は尿道メッシュテープを挿入して腹圧性尿失禁を治療しました。しかし、性交渉の違和感や膣の痛み、妊娠中の人工物への不安、などがあり、勧めていいか毎回考え、結局はもう一人出産してからにしてほしいとお伝えすることが多かったです。
レーザー尿失禁治療が出現し、状況はかわりました。このような挙児希望者に対しての治療として、ひとつの選択です。
このため、妊娠出産する人が、人工物よりレーザー治療をの望みやすいということを、統計的に証明しようと論文を書きました。ずいぶん時間がかかりましたが、国際論文になりました。
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査読付き国際論文を比較することで、グローバルに理解できます。国際論文では、日本で知られているものとは違う分類で表記します
最初に、国際論文では腹圧性尿失禁を次のように分類します
腹圧性尿失禁は、膀胱頸部と尿道が適切に閉じることができない場合に発生します。これら尿道などの構造が下に移動し、弱くなった骨盤底の筋肉を通って膨らむ(ヘルニアになる)とき、それらは過可動性であると言われます 。ヘルニア、または 膀胱瘤は、尿道の角度を変化させ、尿道を開いたままにして尿を漏らします。腹圧性尿失禁には3つの分類があります。
タイプI SUI I 膀胱頸部と尿道は開いており、わずかに可動性が高く、ストレスがかかると尿道は2cm未満下に移動します。I型患者は膀胱瘤の兆候がほとんどまたはまったくありません。
タイプ II SUII II ダウン以上2センチメートルより膀胱頸部および尿道が閉じられるとhypermobileといいます。膣内に膀胱瘤がある患者は、IIA型腹圧性尿失禁といいます。膀胱瘤が膣の外側にある場合、それはタイプIIBとといいます。
タイプIII(重度)SUI III –尿道括約筋は非常に弱い場合です(内因性括約筋欠損症と呼ばれます)。
また、腹圧性尿失禁だけの場合は、SUI. 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が同時にある場合は MUIといいます。
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奥井教授の医学情報誌
当院ホームページでは、論文をわかりやすくしたものが用意されています
辞典すべてを見る場合は、こちらから
腹圧性尿失禁特集は、こちら
動画で情報を。当院のYouTubeから。
動画にて、さまざまな尿失禁のエッセンスを紹介しています
比較的容易に理解できるものから、すごく専門的な内容まで、いろんなパターンで準備しています
スウエーデンでは、尿道のメッシュを挿入すると妊娠希望の女性は、経腟分娩を避ける傾向にあるとわかりました。当院の妊娠希望の方のデータを踏まえて解説します。意外なことに、妊娠希望と腹圧性尿失禁の関連をみた研究はほとんどありません。
デンマークのコペンハーゲン大学からの論文により、人工テープの手術の場合の合併症は、TVT手術のほうが、TVT-O手術(日本ではTOT手術といいます)よりも少ないとされます。合併症は、術後長期におこる切迫性尿失禁、感染、疼痛、性行為痛です
混合性尿失禁では、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が同時に存在します。以前は、腹圧性尿失禁に手術、切迫性尿失禁に投薬というのが一般的でしたが、時代は変化しつつあります。ポイントは、尿道と膣の両方を同時に治療していくことです。43歳の女性を例に説明をします。
腹圧性尿失禁の手術は、いままでの中部尿道スリングのみでした。このため、この治療がうまくいかなかったケースが存在します。このケースは、(1)解剖学的間違い (2)尿失禁メカニズムの問題 (3)人工物の神経刺激 の3つにわけることができます。当院は、全国から(1)解剖的間違いのためのメッシュ摘出を依頼されてきましたが、最近は減ってきました。かわってクローズアップされるのが、(2)と(3)です。今回は、これらについて、イスタンブール大学産婦人科の出した論文を紹介しつつまとめます