【当院の海外論文】軽度便失禁にレーザー治療が効果。

軽度から中程度の便失禁は治療が困難です。粘液が漏れてくるような便失禁は、肛門そのものの筋力の低下によりますので、肛門失禁と言います。レーザー治療は、非蒸散性エルビウムヤグレーザーとネオジウムヤグレーザーの組み合わせで行います。照射部位が、肛門と膣と外陰部です。
世界的な基準では、もっとたくさん漏れる場合は、人工括約筋や、電気刺激を固定する治療(仙骨神経茂樹法)があります。

この研究事例は、従来の治療方法では効果が見られなかった68歳の女性の症例報告です。この女性は肛門失禁と膣萎縮症に悩んでおり、RenovaLaseというレーザー治療を3回受けました。この治療では、肌に傷をつけないエルビウム:ヤグレーザーとネオジム:ヤグレーザーを使用しています。結果、膣萎縮症の症状が大幅に改善し、肛門失禁も解消されました。

肛門にレーザーをかけます。図は、直腸と膣と子宮の模型で、肛門・直腸にレーザーの出力をする特殊なガラス管が入ってます。

膣全体にレーザー照射をするために、特殊な金属の筒をいれて実施します。

 

Okui N, Ikegami T, Erel C (March 05, 2024) Non-ablative Erbium (YAG) and Neodymium (YAG) Laser Treatment for Anal Incontinence and Vaginal Atrophy: A Case Study. Cureus 16(3): e55542. doi:10.7759/cureus.55542

治療前、この女性の膣の健康を示すスコアは7点でしたが、治療後12ヶ月で18点にまで向上しました。また、肛門失禁を示すスコアも改善し、最初は4点だったものが、0点になりました。MRIでの検査では、肛門周囲の筋肉の血管が増え、成長していることが確認されました。内肛門括約筋の厚みも少し増え、圧力の測定値も改善されました。

重要なのは、本来あった血管が、復活したことです。

 

この治療は、閉経後の女性にとって、特に肛門改善のために人工器具を使用することに抵抗がある方々に、新しい選択肢を提供します。閉経後のホルモンの低下は骨盤血管を縮小させ、血流を減少させますが、このレーザー治療はそういった血流不足を改善することができます。「再疎通」と呼ばれるこの現象は、従来の治療に抵抗がある患者にとって、この治療法が良い代替手段となり得ることを示唆しています。

 

 

 

 

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