過敏性腸症候群(IBS)
疾患の特徴 腸の痛みや調子がわるく、関連して便秘や下痢などのお通じの異常(排便回数や便の形の異常)が数ヵ月以上続く状態のときに最も考えられる病気です。大腸に腫瘍や炎症などの病気がないことが前提になりますので、大腸ファイバーなどを受けておく必要があります。日本人のおよそ10%程度の人がこの病気であるといわれている、よくある病気です。性別では、女性のほうが多く、年齢とともに減ってくることがわかっています。
参考までに医療の世界で使用されている診断基準を下に示します。
IBSの診断基準(ローマⅢ基準)
最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、
下記の2項目以上の特徴を示す
1)排便によって症状がやわらぐ
2)症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
3)症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
原因 IBSになる原因はわかっていません。しかし、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった場合、回復後にIBSになりやすいことは、報告されています。腸に炎症が起き、腸の粘膜が弱くなり、腸内細菌の変化も加わます。腸の運動と知覚機能が敏感になるためです。大腸に風船を入れて膨らませて刺激すると、健康な人は強く刺激しないと腹痛を感じないのに対し、IBSの患者さんでは弱い刺激で腹痛が起こることがわかっています。
診断 ローマⅢ基準を用います。確定診断のため、大腸がんなどの悪性疾患や炎症性腸疾患などがないかを調べる検査も必須です。悪性腫瘍などのの疾患が疑われるような、血便や発熱、体重減少、異常な身体所見などのアラームサイン(危険徴候)がある場合、また50歳以上の患者さん、過去に大腸の病気にかかったり、家族にそうした方がいるなどの危険因子がある患者さんに対しては、大腸内視鏡検査や大腸造影検査が必須になります。甲状腺機能異常症などの内分泌疾患や糖尿病性神経障害、寄生虫疾患が症状の原因となる場合もあります。症状に応じて、腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査が有効なときもあります。
治療 毎日3食を規則的にとり、食事バランスに注意し、ストレスを溜めず、睡眠、休養を十分にとるように心がけるのが血用です。刺激物、高脂肪の食べもの、アルコールは控えるべきです。生活習慣を改善しても症状がよくならない場合は、お薬による治療を行います。薬物療法で最初に用いるお薬としては、消化管機能調節薬と呼ばれる腸の運動を整える薬や、プロバイオティクス(ビフィズス菌や乳酸菌など生体にとって有用な菌の製剤)、高分子重合体といわれる水分を吸収し便の水分バランスを調整する薬があります。これらのお薬は下痢症状が中心の方、便秘症状が中心の方のどちらにも用いられます。下痢型の方には腸の運動異常を改善させるセロトニン3受容体拮抗薬(5-HT3拮抗薬)、また便秘型の方には便を柔らかくする粘膜上皮機能変容薬も用いられます。また下痢に対しては止痢薬、お腹の痛みには抗コリン薬、便秘に対しては下剤も補助的、頓服的に使用されます。
よこすか女性泌尿器科での治療 IBSの患者でこまるのは、長年の下痢で肛門周囲の感染がなおらなくなったり、うっ血したり、便失禁になったりすることで、これは内科的な治療では改善しません。そこで、肛門にレーザーをもちいた血流改善とコラーゲン増加を積極的におこなっています。当院での治療は、基本的に内科的なIBSの治療の補足的役割ですが、不快感を大きく治すことで内科治療をサポートする役割にあります。ガス漏れのタイプのIBSは今のところ成功例はありません。パンツに液体状の便が出てくるIBSについては、腹部全体の症状には効果ありませんが、肛門症状には10例中10例とも著効しています。(学会発表予定)
現在の世界的な注目点 肛門および会陰よりエネルギーデバイスで肛門の状態がよくなるのではないかと注目されて学会での報告がでてきています。しかし、論文数が少なく、まだ予測の範囲です。エネルギーデバイスには、ヤグ・レーザー、CO2レーザーなどがありますが、2019年米国政府はこれらの機器での膣のやけどなどの問題を7社に対して指摘しております。指摘されなかったメーカーは、非蒸散性エルビウム・ヤグ・レーザー(フォトナ社)だけでした。この会社の製品でしたら膀胱瘤の手術の術後に補強としての価値があるのではと注目した学会があります。
マンガで解説
下痢・便秘をくりかえしたし、下痢が継続してつらい、、、
こんなふうに、腸が精神的ストレスなどの刺激に対して過敏な状態になります。
もちろん、便通異常を起こして、肛門のまわりは、便がでるたびに擦り切れていきます。
このやっかいな病気が過敏性腸症候群です。
仕事や人間関係の悩みが多い現代社会では急増中の病気です。
実は、よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニックには、膀胱の病気である過活動膀胱や前立腺肥大症の悩みできたものの、じつは、
この過敏性腸症候群でもなやんでいるという人が本当におおいのです!
もはや、泌尿器科だ、外科だ、消化器科だと 区別していては治療ができません
骨盤の悩みは、みんな一緒、
この過敏性腸症候群のケアをみていくと、そのまま、過活動膀胱のケアにも通じます
Q 過敏性腸症候群ってどんな病気?
下痢や便秘などを繰り返し起こしますが、胃腸の内視鏡検査などをしても原因となる病気がみつからないのが過敏性腸症候群です。症状によって次の3つに分けられます
● 神経性下痢(下痢型)・・・・・・激しい腹痛の後、粘液性の下痢便が出ます。朝起きてすぐ、朝食後、出かける前、電車の中、到着後など、便意をもよおす回数が多いのが特徴です。
● けいれん性便秘(便秘型)・・・・・・腹痛を伴い、ウサギのフンのようなコロコロした便がポタンと落ちて水に浮かぶことがあります。
● 交替性便通異常(交替型)・・・・・・下痢と便秘を繰り返します
過敏性腸症候群のローマ基準とは?
過敏性腸症候群には、ローマで開催された会議で診断基準をきめております。
欧米では日本より過敏性腸症候群が多く知られてきました。最近の調査では日本人も程度に差はみられても女性の28%、男性の10%に過敏性腸症候群の訴えがあり、増加傾向にあることが分かっています。とくに20代の女性では40%に達し、小中学生の10-20%が慢性の腹痛を訴えるといわれています。世界的におおいから、国際基準があるのです。
Q 過敏性腸症候群の原因は?
最初は、ストレスであろうとおおいます。心の中にため込んでしまうことで、自律神経のバランスが乱れ、排便のメカニズムがくずれて過敏性腸症候群を引き起こすことがおおいのです。「腹がたつ」「腹わたが煮えくりかえる」など、胃腸と感情との関わりを表すことばは多いですね、つまり、胃腸は「心の鏡」なのです。
過敏性腸症候群の陥りやすい悪循環は?
悪循環をイラストにしてみました。
下痢、便秘のために、どんどん自分をおいつめる人がおおいです
しかたないことですが、どこかで、この連鎖を断ち切らないといけません。
Q かかりやすい性格ってありますか?
病気の診断の際、問診や性格も十分考慮しましが、その結果からも過敏性腸症候群と性格は深く関わっていることが明らかされています。一般には、まじめすぎる人や、うつになりやすい人などは、かかりやすいとされています。
ストレスにさらされる機会が多い20代の女性や30~40代の働き盛りの人にも多くみられます。
過敏性腸症候群の下痢の悩みを具体的に考えてみよう
今回のマンガは、いちごさん
下痢のおおい過敏性腸症候群です
彼女の場合は、朝食をたべると大変です
人間はもともと、朝食をたべると便意を感じます
すると何度も何度もトイレにいくはめになります
彼女はときどき、パートの仕事をしているのですが、
その電車通勤が大変です
電車の中で便意がこると、おしりが我慢できません
もれそうになりながら、我慢します
おなかは痛くなります
朝5回も排便があるとつらいですね
なんどもなんどもおしりを紙でふいたりしますので、
とうとう肛門ががさがさになります
こうして、朝は、肛門があれはてておわります
『もう、朝食はたべてくない!!!』とおもうことも多いのだそうです
Q 病院ではどんな治療をしますか?
問診のほかに、過敏性腸症候群かどうかを診断するために、性格テストや心理テスト、自律神経の働きを調べる検査などを行います。さらにほかの病気がないかを調べる「鑑別診断」あるいは「除外診断」を行います。
過敏性腸症候群の治療は、病気の内容や、病気が起こった背景(生活習慣や性格など)を明らかにし、治療を進めることになります。
治療の中でとえも大切なのが、生活習慣と食事の改善です。病気について心配し過ぎないようにし、規則正しい生活を送るなど、健康人としての生活習慣を身につけます。
便秘や下痢などの症状を改善するためには、腸の運動を調整する「腸運動調整薬」や鎮痙薬、抗うつ薬、軽い精神安定剤などを処方します。ストレスや緊張をやわらげる「自律訓練法」などの精神療法を指導する場合もあります。
過敏性腸症候群の対策
では、対策を考えてみましょう
一番大切なことは、生活そのものからみなおすことになります
過活動膀胱のときを思い出して下さい
過活動膀胱も生活を見直すことが本当に有効でしたね
ですから、いかに骨盤全体の血行を良くするかがポイントになっていきます
多くの方で、朝食をとることで、便意が出現して大変なおもいをするから、こう朝食をたべたくないといいます。でも、食べないと体はもたない。どうしたらいいんだろうということです。
原則は、この6つです。
食事への考え方をまず、かえましょう
食事はたのしいものです。笑いが必要です
食事のこと、もくもくとさっさとすますものではありません
ゆっくりかんで、ゆっくり楽しんでたべる
できるだけ、笑顔でたべることができるように、
努力なんてむずかしいこといわず、たのしいと思って食べる
ここがポイントです
次にたいせつなことは、とても基本的だけど
ビタミンB2、 ビタミンB6、ビタミンC、食物繊維
あとは、自分にあったよい乳酸菌をさがすこと!
食物繊維が、過敏性腸症候群にきくかきかないかといえば、
ゆっくりききます
根気よく食べていくことが大切なんです
よくないものといえば、
お酒ですね。
お酒をのむと、なんどもトイレへいきます
すると、必要以上に水分が体からでていってしまいます。
そこで、ほとんどの人は、すぐ寝てしまいます
これがよくありません
体は、必要な水分すらとりあげられて、脱水になります
血行不全をおこし、腸も膀胱もむくんでしまうのです
IBSの関連疾患について