尿管狭窄による水尿管
疾患の特徴 巨大な膀胱瘤には尿管狭窄になりやすい傾向があります
膀胱瘤は、膀胱三角部という尿管のつなぎ目が大きく落ちることが圧倒的に多いです。膀胱瘤の症状でよくある頻尿や過活動膀胱という症状は、膀胱三角部での血流障害が起きるからです。尿管口は三角部にありますので、血流障害を持ちやすく、このため尿管は筋肉としての能力がおちます。やがて、尿管口が萎縮して、本疾患をおこします。腎臓からながれた尿は、膀胱へ駆出されないために、尿管にのこり尿管が拡張する水尿管という病気をおこします。
膀胱瘤を修復手術を実施したあと、左右均等に尿管まで治ることはすくなく、左右どちらかの尿管狭窄が残るケースがあります。この場合、後年になり腎臓まで尿の排出がわるくなると、水腎症・水尿管という病気になります。
MRI画像ではこんな映像になります
原因 基本的には血流障害が原因です。膀胱瘤の手術に際して、血流を損なわないように実施することが必要です。とくに近年用いられる人工メッシュの場合は、人工物が血管を圧排することがありますので、要注意です。
診断 膀胱瘤を修復する前に、事前にMRIにて膀胱と尿管の位置関係を確認します。レントゲン写真でも確認することが可能です。
癒着した組織のなかに埋もれて確認しにくくなった右尿管
治療 軽度の状態であれば、生活に支障がありません。しかし、その後の人生に影響がありそうな場合は、初期のうちに拡張治療をされることを勧めます
膀胱鏡という内視鏡を膀胱内に挿入し、狭くなった尿管にガイドワイヤーというやわらかいケーブルを挿入します。このワイヤーにそってバルーンと呼ばれる風船を挿入して狭いところを拡張します。日帰り手術です。
現在の世界的な注目点 膀胱瘤の手術の合併症と考えますが、日本ではあまり注目されていません。しかし、世界的には定期的に注意を促す論文を書くドクターが出現します
もっととも古い論文が、1924年で、Trans Edinb Obstet Soc. 1924;44:207-211. Hydroureter and Hydronephrosis Secondary to Prolapse and Cystocele James Young著 のものです。
近年の論文を3つあげると、
Bilateral hydroureter and hydronephrosis causing renal failure due to a procidentia uteri: a case report. Sudhakar AS, Reddi VG, Schein M, Gerst PH. Int Surg. 2001 Jul-Sep;86(3):173-5.
Bilateral hydronephrosis secondary to cystocele. Oksay T, Ergun O, Capar E, Koşar A. Ren Fail. 2011;33(5):537-9. doi: 10.3109/0886022X.2011.569104. Epub 2011 Mar 29.
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