私たちの腹圧性尿失禁治療は3つの特徴があります
腹圧性尿失禁といえば、”咳やくしゃみで尿が漏れる病気です。比較的簡単な手術で治ります”と書いてあるホームページが多いですね。しかし、これは読者の知りたいところを書いていません。腹圧性尿失禁には3種類のパターンがあります。通常2つなのですが、2023年から新しいタイプの3つ目が見つかっています。
(1)尿道の周りの括約筋が弱くなってきたために、尿道の内圧が下がるパターン
(2)尿道を支えている靭帯が出産で傷がついて、尿道が落ちてきたパターン
(3)(新しい)尿道の筋力や固定はほぼ正常下限。しかし、尿道にかかる過重に耐えられないアスリートのパターン
1)についての当院のエビデンス
Okui N, Miyazaki H, Takahashi W, Miyauchi T, Ito C, Okui M, Shigemori K, Miyazaki Y, Vizintin Z, Lukac M. Comparison of urethral sling surgery and non-ablative vaginal Erbium:YAG laser treatment in 327 patients with stress urinary incontinence: a case-matching analysis. Lasers Med Sci. 2022 Feb;37(1):655-663. doi: 10.1007/s10103-021-03317-x.
当院では、尿道の内圧を測定することにより、内圧の不足なケースを選出します。この場合は最初の治療として、尿道を釣り上げるテープ手術を進めません。なぜなら、薄くなった尿道周囲の組織に人工物が挿入されることで、後々のトラブルを招くためです。この研究では、327人の腹圧性尿失禁患者のデータを回収して、人工知能で分析をしました。
しかし、レーザー治療の反応が悪い場合があります。これは、尿道の筋肉を成長させることが難しいためです。このような場合は、人工テープに脂肪組織を追加してカバーを作ります。この技術をハイブリッドTOT手術と言います。この技術で治療された論文は、当院のものではありませんが、以下です。Dogan S (March 17, 2022) Comparison of Autologous Rectus Fascia and Synthetic Sling Methods of Transobturator Mid-Urethral Sling in Urinary Stress Incontinence. Cureus 14(3): e23278. doi:10.7759/cureus.23278
(2)についての当院のエビデンス
この技術はすでに確立されて30年経ちます。このため、どれだけたくさんの手術を安全に行えているかどうかが、エビデンスになります。以下に2022年(コロナ禍での治療件数)を紹介します。膀胱脱・子宮脱手術の項目の(数字)がそれにあたります。
特に注目して欲しいのが、メッシュ摘出をしていることです。メッシュトラブルは、現在とても増えています。尿失禁手術においては、2%とされてますが、その2%になった人にとっては大変辛いものです。
当院は、おそらく手術件数からすると、関東でのメッシュトラブルのほとんどを担当していることになります。このことで、メッシュを挿入するときの重要ポイントの見方が当院にデータとして蓄積されます。
(2022年手術件数は、こちら)
(3)についての当院のエビデンス
アスリートでの尿失禁分野は世界的にも存在しないので、当院が初めてということになります。
日本から世界へという当院の目標をしめせたものと自負しています。
当院の研究により、アスリート女性の尿道が、成長していない人がいることを突き止めました。
Long-Term Improvement in Urinary Incontinence in an Elite Female Athlete Through the Laser Treatment: A Case Report.
Okui N, Ikegami T, Mikic AN, Okui M, Gaspar A.
Cureus. 2023 Mar 27;15(3):e36730. doi: 10.7759/cureus.36730.
こちらのMRIを見るとよくわかるのですが、治療前は、尿道が円形でなくて、卵形をしています。
そして、治療により、尿道の周囲に均等に筋肉が成長することで、円形になっています。
均等な圧力がないと、アスリートのような過重に尿道が耐えることができません。そこで、他のアスリートも同じようになっているのか、人工知能で調査しています。
Analysis of Predictive Factors for Return to Sports in Female Athletes With Stress Urinary Incontinence.
Okui N, Erel T, Okui MA.
Cureus. 2023 Aug 30;15(8):e44364. doi: 10.7759/cureus.44364.
この研究により、まだ出産前の女性の場合を含めた尿失禁治療の計算ができます