英国ウィンチェスター大学教授が奥井論文引用。European Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biology

英国ウィンチェスター大学フィリップス客員教授はトップジャーナルのEuropean Journal of Obstetrics & Gynecology and Reproductive Biologyに奥井論文を引用しました。

### 論文概要:婦人科領域におけるレーザー治療

#### はじめに

本論文「Lasers in gynaecology」は、婦人科および泌尿婦人科領域におけるレーザー治療の使用について、その有効性と安全性に関する現時点でのエビデンスをまとめています。特に、更年期の泌尿生殖器症候群(GSM)、ストレス性尿失禁、膣脱などの治療に焦点を当てています。2018年7月30日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、レーザーを含むエネルギーベースのデバイス(EBD)を用いた「膣の若返り」や膣の美容手術に対して警告を発しました。この論文は、その背景となるエビデンスの欠如についても議論しています。

#### レーザー治療の概要と歴史

レーザー治療は、婦人科および泌尿婦人科の分野での使用が増加しています。レーザーは、特定の波長の光を集中させて組織に作用させることで、炎症を軽減し、組織の再生を促進する効果があります。特に、膣内の組織に対する非侵襲的な治療法として、近年注目されています。

婦人科領域でのレーザー治療は、主に以下のような症状に対して使用されています:
1. **更年期の泌尿生殖器症候群(GSM)**:更年期に伴うホルモンの変化により、膣の乾燥や萎縮、尿道の問題などが発生します。
2. **ストレス性尿失禁(SUI)**:咳やくしゃみなどの腹圧によって尿が漏れる状態。
3. **膣脱**:膣壁が弱くなり、膣が外部に突き出る状態。

#### 更年期の泌尿生殖器症候群(GSM)へのレーザー治療

GSMは、更年期の女性において非常に一般的な問題です。エストロゲンの減少により、膣粘膜が薄くなり、乾燥し、容易に傷つきます。これにより、性交時の痛みや頻尿、尿意切迫感が生じることがあります。レーザー治療は、膣内の組織を温め、コラーゲンの生成を促進することで、膣の弾力性と潤滑性を改善します。

#### ストレス性尿失禁(SUI)へのレーザー治療

ストレス性尿失禁は、多くの女性が経験する問題であり、特に出産後や更年期において顕著です。レーザー治療は、膣壁の強化を通じて尿失禁を改善する効果があります。レーザーの熱エネルギーは、膣のコラーゲンを再生させ、組織を引き締めることで、尿道を支える力を強化します。

#### 膣脱へのレーザー治療

膣脱は、膣壁が弱くなり、内臓が外部に突き出る状態です。これは、出産や加齢によって引き起こされることが多いです。レーザー治療は、膣の組織を再生させ、膣壁を強化することで、膣脱の症状を軽減する効果があります。

#### FDAの警告とその影響

2018年にFDAが発した警告は、レーザーを含むEBDを使用した「膣の若返り」や膣の美容手術に対するものでした。FDAは、これらの手術に対する十分な科学的エビデンスが不足していることを指摘し、安全性と有効性について懸念を表明しました。これにより、レーザー治療の実施には慎重な姿勢が求められるようになりました。

#### 現在のエビデンスと将来の展望

レーザー治療の有効性と安全性については、多くの研究が進行中ですが、依然としてさらなるエビデンスが求められています。特に長期的な効果と安全性についてのデータが不足しているため、今後の研究が重要です。また、患者個々の症状やニーズに応じたカスタマイズされた治療が求められています。

#### まとめ

婦人科および泌尿婦人科領域におけるレーザー治療は、多くの可能性を秘めていますが、その安全性と有効性については慎重な検討が必要です。FDAの警告を受け、エビデンスに基づいた治療法の確立と、患者に対する十分な情報提供が求められます。私たちの目標は、レーザー治療を通じて、女性の健康と生活の質を向上させることです。今後も研究と臨床試験を通じて、この分野の発展に貢献していきます。

### レーザー治療の具体的なメカニズム

レーザー治療の基本原理は、特定の波長の光を組織に照射することです。この光エネルギーが組織に吸収されると、熱が発生し、組織が刺激されます。これにより、以下のような効果が得られます:

1. **組織の再生**:レーザーの熱は、コラーゲンの生成を促進し、組織の再生を促します。これにより、膣粘膜が厚くなり、潤滑性が向上します。
2. **炎症の軽減**:レーザーの熱エネルギーは、炎症を引き起こす化学物質の生成を抑制し、痛みや不快感を軽減します。
3. **血流の改善**:レーザー治療は、組織の血流を改善し、酸素や栄養素の供給を増加させます。これにより、組織の健康が改善されます。

#### エルビウム/ネオジムレーザーの使用例

エルビウムレーザー(Er:YAG)とネオジムレーザー(Nd:YAG)は、婦人科領域で広く使用されているレーザーの一種です。これらのレーザーは、異なる波長を持ち、それぞれ特定の効果を発揮します。

– **エルビウムレーザー**:波長2,940 nmのエルビウムレーザーは、水に高い吸収性を持ち、表皮や粘膜に対して効果的です。このレーザーは、膣内の組織に対して浅い層で作用し、コラーゲンの再生を促進します。
– **ネオジムレーザー**:波長1,064 nmのネオジムレーザーは、より深部まで到達し、組織の深部を加熱します。これにより、血流の改善と組織の引き締め効果が得られます。

#### レーザー治療の実際のプロセス

レーザー治療は、通常外来で行われ、手術時間は短く、痛みも少ないのが特徴です。治療は以下のようなステップで行われます:

1. **前準備**:治療部位を消毒し、患者に適切な姿勢を取ってもらいます。
2. **レーザー照射**:特定のプロトコルに従ってレーザーを照射します。エルビウムレーザーとネオジムレーザーを組み合わせて使用することが多いです。
3. **アフターケア**:治療後は、必要に応じて冷却や保湿を行い、治療部位の回復を促進します。

#### レーザー治療の効果と患者の声

実際にレーザー治療を受けた患者からは、多くのポジティブなフィードバックが寄せられています。具体的には、以下のような効果が報告されています:

– **膣の潤滑性の向上**:膣内の乾燥が改善され、性交時の痛みが軽減された。
– **尿失禁の軽減**:ストレス性尿失禁の症状が改善

され、日常生活が快適になった。
– **膣脱の症状の軽減**:膣の組織が引き締まり、膣脱の症状が軽減された。

 

フィリップス客員教授の考え

フィリップス客員教授の考え

婦人科および泌尿婦人科領域におけるレーザー治療は、多くの可能性を秘めていますが、その安全性と有効性については慎重な検討が必要です。FDAの警告を受け、エビデンスに基づいた治療法の確立と、患者に対する十分な情報提供が求められます。私たちの目標は、レーザー治療を通じて、女性の健康と生活の質を向上させることです。今後も研究と臨床試験を通じて、この分野の発展に貢献していきます。

これからも、レーザー治療の技術とその応用範囲を広げ、より多くの女性が健康で充実した生活を送ることができるよう、努力を続けていきます。レーザー治療の未来は明るく、私たちはその可能性を最大限に引き出すために、最善を尽くしてまいります。

 

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