間質性膀胱炎・骨盤痛への取り組み【当院の7つの海外論文】

間質性膀胱炎

非常に熱心に取り組んでいる分野です。今までの間質性膀胱炎BPS/ICの概念に新しいものを取り入れました。このため、いくつもの英語(査読)論文を出しましたが、いずれも査読即合格しました。(←これすごいのです。通常は査読委員から色々重箱の隅を突くような質問が来るのですが、3つの論文ともベタ褒めでした。)

(1)間質性膀胱炎 膀胱からのアプローチ

膀胱水圧拡張

この分野において、治療件数はその医療施設での経験の指標となります。治療経験が豊富な病院であればあるほど、より安全かつ効果的に治療対象を見つけることができるのです。特にBPS/ICの治療においては、膀胱内の亀裂を早期に発見することが非常に重要です。

BPS/ICは、膀胱の内壁に小さな亀裂が生じることから始まります。この亀裂から尿成分が膀胱の壁に染み込み、間質が炎症を起こすことで痛みや不快感を引き起こします。炎症が進行すると、痛みを引き起こす物質が増え、膀胱がさらに腫れ上がり、結果的に新たな亀裂が発生するという悪循環に陥ります。

この悪循環を断ち切るためには、膀胱内の亀裂をいち早く見つけて対処することが不可欠です。亀裂を凝固する手術は、BPS/ICの症状を緩和するための効果的な治療法の一つです。亀裂を見つけて治療する技術は、医療従事者の経験とスキルに大きく依存します。そのため、私たちはこの技術を磨き続けるために不断の努力を重ねています。

数多くの症例が積み重なっていることは、その医療施設が信頼できる治療を提供できることを示すエビデンスとなります。私たちの施設では、BPS/ICの患者さんに対して長年にわたる治療経験を持ち、その経験を基に最適な治療を提供しています。特に膀胱鏡検査や亀裂凝固手術においては、豊富な症例を通じて技術を磨いてきました。

また、BPS/ICの診断と治療には多角的なアプローチが求められます。私たちは、膀胱内の亀裂だけでなく、患者さんの全体的な健康状態や生活習慣も考慮に入れて治療計画を立てています。これにより、個々の患者さんに最適な治療を提供し、症状の改善と生活の質の向上を目指しています。

BPS/ICは、患者さんにとって非常に辛い疾患であり、適切な治療が求められます。私たちの施設では、最新の医療技術と豊富な経験を基に、患者さん一人ひとりに寄り添った治療を提供しています。治療の過程では、患者さんの声に耳を傾け、共に最適な治療法を模索し続けています。

今後も私たちは、BPS/ICの治療技術の向上と新しい治療法の開発に取り組んでいきます。多くの症例から得られた知見を基に、より効果的な治療法を追求し、患者さんの苦痛を軽減するために最善を尽くしていきます。私たちの目指すところは、間質性膀胱炎の患者さんが痛みや不快感から解放され、健康で充実した生活を送ることができるようになることです。そのために、医療の現場で積み重ねられた経験と知識を最大限に活用し、最前線での治療を提供し続けていきます。

 

(2)間質性膀胱炎の診断に人工知能をとりいれた

複雑なBPS/ICの治療に人工知能を活用する取り組み

BPS/ICは、その複雑さから多くの患者と医療従事者にとって大きな挑戦です。この疾患は原因が多岐にわたり、その結果として症状も様々です。頻尿、尿意切迫感、骨盤の痛みなど、多様な症状が患者の生活の質を大きく損ないます。これに対処するために、現在では多くの治療法が存在しますが、その選択と適用は容易ではありません。

BPS/ICの治療には、様々なアプローチが必要です。膀胱内注射や経口薬、ライフスタイルの変更、物理療法、さらには外科的治療まで、幅広い治療法が提案されています。しかし、これらの治療法を順に試していくというアプローチは、痛みや不快感から早く解放されたい患者にとっては、ジレンマを生じさせます。なぜなら、治療効果が現れるまでに時間がかかり、場合によっては全く効果がないこともあるからです。

このような背景から、私たちは間質性膀胱炎の治療に人工知能(AI)を取り入れることを決定しました。この発想は、最初の論文執筆当時には非常に珍しかったのですが、現在ではその有効性が広く認められ、多くの医療機関がAIの導入を進めています。私たちのチームも、複数の医学論文を発表するまでに至り、AIを用いた治療アプローチの確立に貢献してきました。

AIの導入は、複雑なデータの解析と治療法の選定において特に有用です。AIは膨大な患者データを迅速に解析し、それぞれの患者に最も適した治療法を提案する能力があります。これにより、従来の試行錯誤的なアプローチを避け、患者ごとに最適化された治療を迅速に提供することが可能となります。

私たちの研究は、間質性膀胱炎を3つの異なるクラスに分類することを最終目標としています。これにより、各クラスに最適な治療法を特定し、個別化医療の実現を目指しています。間質性膀胱炎のクラス分けは、症状の重さ、発症の原因、患者の背景などを総合的に考慮して行われます。このアプローチにより、患者ごとにカスタマイズされた治療計画を策定し、より効果的な治療を提供することができると考えています。

 AI導入の具体的な効果と進展

具体的な例として、AIを活用した膀胱内の亀裂検出技術があります。間質性膀胱炎の患者において、膀胱内の亀裂は非常に重要な診断指標です。亀裂から尿成分が膀胱の壁に染み込み、炎症を引き起こすことで痛みや不快感を増幅させます。AIは、膀胱鏡検査の映像を解析し、微細な亀裂を早期に発見する能力があります。これにより、亀裂を迅速に治療し、症状の悪化を防ぐことができます。

さらに、AIは治療法の効果をモニタリングし、リアルタイムでフィードバックを提供することも可能です。例えば、患者が受けた治療に対する反応をAIが分析し、次の治療ステップを最適化します。これにより、患者の状態に応じた柔軟な治療が実現し、治療効果の最大化が期待されます。

私たちはこれまでに、AIを用いた治療法の効果を示す複数の臨床研究を実施してきました。その結果、AI導入による治療成績の向上が確認されており、患者満足度も大幅に向上しています。特に、AIによる個別化治療アプローチは、従来の標準治療を超える効果を示しており、多くの患者が痛みから解放されています。

AIを活用した未来の展望

今後の展望として、AIのさらなる進化と応用範囲の拡大が期待されます。AIは、より高度な解析技術を取り入れることで、間質性膀胱炎の病因解明や新しい治療法の開発に寄与する可能性があります。また、AIを活用した遠隔診療の普及により、地域医療の格差を解消し、より多くの患者に高品質な医療を提供することが可能となるでしょう。

私たちは、AIを活用した間質性膀胱炎の治療アプローチをさらに発展させ、世界中の患者に貢献することを目指しています。これまでに得られた知見を基に、より効果的な治療法を追求し続け、患者一人ひとりが健康で充実した生活を送ることができるように努めてまいります。

間質性膀胱炎の治療において、AIの導入は大きな変革をもたらしています。その複雑さから従来の治療法では限界があった部分を、AIの力で克服し、より効果的で迅速な治療を実現しています。私たちの研究と実践は、AIの可能性を示すものであり、今後もこの分野の発展に寄与していく所存です。AIを用いた個別化治療は、間質性膀胱炎だけでなく、他の複雑な疾患の治療にも応用できる可能性があり、医療の未来を切り開く鍵となるでしょう。

私達のAI導入は、いくつかの研究論文になっています。 Okui N.  Unsupervised Machine Learning Reveals a Vulvodynia-Predominant Subtype in Bladder Pain Syndrome/Interstitial Cystitis

そして、気軽につかえるAIの開発もしました。AIまちこ先生(人工知能)とYouTube チャンネルで尿もれ相談

間質性膀胱炎

 

(3)新しいアプローチを数種類用意

間質性膀胱炎の新しい治療アプローチ
当院では、間質性膀胱炎(IC/BPS)の治療において、疾患を3つの異なる種類に分類し、それぞれに最適なアプローチを開発しています。この取り組みの中で、特に世界的に評価されているのが、ヴォルヴォディニアを合併した間質性膀胱炎へのアプローチです。このタイプを、私たちは「間質性膀胱炎 第二グループ」と呼んでいます。

ヴォルヴォディニアを伴う間質性膀胱炎の特徴
ヴォルヴォディニアは外陰部に痛みを伴う疾患で、特に処女膜瘢痕部に痛みが集中します。この部分は神経の移行部分に位置し、痛みが隣接する臓器に波及する特性があります。具体的には、膀胱だけでなく、周囲の組織や神経に影響を与え、痛みが広がるため、膀胱の治療だけでは不十分です。このため、私たちのアプローチでは膣のレーザー治療を併用し、神経周囲のむくみを改善させることで、痛みの根本的な原因に対処しています。

膣レーザー治療の効果と実施方法
膣レーザー治療は、エルビウム/ネオジムレーザー(VEL+Nd)を使用して行われます。この治療法は、膣内の組織に対して非侵襲的に作用し、炎症を抑え、組織の再生を促進します。具体的には、レーザーが膣内の粘膜を刺激し、コラーゲンの生成を促進するとともに、血流を改善し、炎症を軽減します。これにより、神経周囲のむくみが減少し、痛みが軽減されるのです。

治療は通常、月に1回のペースで3ヶ月間行われます。各セッションは短時間で終了し、患者への負担も少ないのが特徴です。また、治療後の回復も早く、日常生活に支障をきたすことなく治療を続けることができます。この治療法は、従来の治療法と比べて、痛みの軽減と生活の質の向上において優れた効果を発揮しています。

臨床試験とその成果
私たちは、この新しいアプローチの有効性を確認するために、複数の臨床試験を実施しました。その結果、多くの患者が治療後に顕著な改善を見せ、痛みの軽減と共に生活の質が向上しました。具体的なデータとして、患者のPUF(Pelvic Pain and Urgency/Frequency)スコアやVHIS(Vaginal Health Index Score)が治療前と比較して大幅に改善されたことが確認されています。

また、治療を受けた患者からは、排尿回数の減少や排尿時の痛みの軽減、外陰部の痛みの減少など、多くのポジティブなフィードバックが寄せられています。これらの結果は、私たちのアプローチがヴォルヴォディニアを伴う間質性膀胱炎の治療において非常に効果的であることを示しています。この分野は、複数の論文になってます。Okui N. Laser Treatment for Patients With Vulvodynia and Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome: A Case Series (The UNICORN-3 Study)

患者中心のケアと今後の展望
私たちの目指すところは、患者一人ひとりに最適な治療を提供し、痛みや不快感から解放することです。ヴォルヴォディニアを伴うBPS/ICの治療においては、膣レーザー治療を中心に据えた個別化治療を実施することで、患者の生活の質を大幅に向上させることができました。

今後も、さらなる研究と臨床試験を通じて治療法の改善を続け、新しい治療法の開発に取り組んでいきます。また、患者の声に耳を傾け、常に最善のケアを提供できるよう努めてまいります。私たちの最終目標は、BPS/ICのすべての患者が健康で充実した生活を送ることができるようにすることです。

まとめ
ヴォルヴォディニアを伴うBPS/ICの治療において、膣レーザー治療を中心とした新しいアプローチは非常に効果的であることが証明されました。治療を受けた多くの患者が痛みから解放され、生活の質が向上しています。私たちは今後もこの分野の研究を進め、さらに多くの患者に最適な治療を提供できるよう努めてまいります。BPS/ICの治療におけるAIの導入や新しい技術の活用は、医療の未来を切り開く重要なステップであり、私たちはその先駆者として引き続き努力していきます。

 

当院からの7つの国際英語論文

 

1. Mathematical Approach to Synergistic Management of Bladder Pain Syndrome/Interstitial Cystitis and Vulvodynia: A Case Series Utilizing Principal Component Analysis, Cluster Analysis, and Combination Laser Therapy

BPS/ICおよび外陰痛症の相乗管理における数理的アプローチ:主成分分析、クラスタ分析、および複合レーザー療法を用いた症例シリーズ
DOI: 10.7759/cureus.65829
概要: この症例シリーズでは、膀胱痛症候群/間質性膀胱炎(BPS/IC)および外陰痛を持つ3人の患者に対して、個別化治療アプローチの有効性をクラスタ分析と複合レーザー療法を用いて示しています。主成分分析(PCA)により、症状クラスタの動的な変化を視覚化し、治療の意思決定を支援しました。各患者は治療の過程でクラスタ間を移動し、最終的に症状の完全解消が見られました。この研究は、BPS/ICと外陰痛の相互関係を強調し、数学的分析による包括的かつ適応的な治療戦略の有効性を示しています。

2. The Importance of Psychological Assessment in the Management of Bladder Pain Syndrome/Interstitial Cystitis and Vulvodynia: A Case Report

BPS/ICおよび外陰痛管理における心理評価の重要性:症例報告
DOI: 10.7759/cureus.63617
概要: この症例報告では、BPS/ICおよび外陰痛患者の管理における心理評価の重要性を強調しています。5年間にわたる難治性のBPS/ICおよび外陰痛を抱える48歳の女性の症例を通じて、心理的要因が治療効果に与える影響を詳述し、包括的な治療アプローチの一環として心理評価の必要性を示しています。

3. Unsupervised Machine Learning Reveals a Vulvodynia-Predominant Subtype in Bladder Pain Syndrome/Interstitial Cystitis

教師なし機械学習が示すBPS/ICにおける外陰痛優位のサブタイプ
DOI: 10.7759/cureus.62585
概要: この研究では、BPS/ICの患者データを用いて教師なし機械学習を行い、外陰痛を主体とするサブタイプを明らかにしました。階層クラスタリングを用いて、BPS/IC患者の症状の異なるパターンを特定し、治療アプローチの再評価の必要性を示しています。

4. Laser Treatment for Patients With Vulvodynia and Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome: A Case Series (The UNICORN-3 Study)

外陰痛およびBPS/ICに対するレーザー治療:症例シリーズ(UNICORN-3研究)
DOI: 10.7759/cureus.41786
概要: この症例シリーズ(UNICORN-3研究)では、外陰痛およびBPS/IC患者に対するレーザー治療の有効性を示しています。症状評価やレーザー治療の効果を詳述し、複合的な治療戦略の一環としてのレーザー治療の潜在的なメリットを強調しています。

5. Is Erbium/Neodymium Laser Combination Therapy an Effective Treatment Option for Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome With Vulvodynia?

外陰痛を伴うBPS/ICに対するエルビウム/ネオジムレーザー複合治療は有効か?
DOI: 10.7759/cureus.31228
概要: この研究では、エルビウム/ネオジムレーザー複合治療が外陰痛を伴うBPS/ICに対して有効かどうかを検討しています。レーザー治療の安全性と有効性についての結果を示し、新しい治療法としての可能性を探ります。

6. Examining Vaginal and Vulvar Health and Sexual Dysfunction in Patients with Interstitial Cystitis (UNICORN-1 Study)

IC患者における膣および外陰の健康と性的機能障害の検討(UNICORN-1研究)
DOI: 10.1007/s00192-022-05220-7
概要: このUNICORN-1研究では、BPS/IC患者における膣および外陰の健康状態と性的機能障害を評価しています。IC/BPS患者の生活の質に大きな影響を与えるこれらの要素を詳述し、包括的なケアの重要性を示しています。

7. Effects of Non-Ablative Vaginal Erbium

Laser Treatment for Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome: A Case Series (UNICORN-2 Study)

BPS/ICに対する非アブレーティブ膣エルビウム

レーザー治療の効果:症例シリーズ(UNICORN-2研究)
DOI: 10.1080/13697137.2019.1703940
概要: このUNICORN-2研究では、BPS/IC患者に対する非アブレーティブ膣エルビウムレーザー治療の効果を検討しています。治療抵抗性のIC/BPS患者におけるこの治療法の有効性を示し、治療オプションとしての可能性を探ります。

合わせてよみたい

PAGE TOP