フレイルと過活動膀胱【当院の海外論文】

フレイル、ご存知ですか?

フレイルとは、高齢者によく見られる健康状態の一つです。年齢が進むにつれて、体力や抵抗力が低下し、日常生活の活動に制約が出てくることを指します。フレイルの状態では、疲れやすく、体力が落ちているため、日常の動作にも苦労することが増えます。

フレイルの主な特徴は次のようになります:
1  疲れやすい:普段の活動でも疲れを感じやすく、元気がないことが多いです。
2  抵抗力の低下:風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすく、回復にも時間がかかります。
3  歩行能力の低下:階段の昇り降りや歩くことに苦労し、自立した移動が難しくなります。
4  慢性的な疾患の増加:高血圧、糖尿病、心臓病、呼吸器系の疾患などの持病が増えることがあります。
5  体重減少:体重が減ることがあり、健康を維持するための栄養摂取が不十分になることがあります。
フレイルは、高齢者に限らず、生活習慣や健康状態によっても影響を受けることがあります。

フレイルは過活動膀胱と関係がありますか?

フレイルは主に高齢者に見られる、全身的な身体機能の低下や疲労感が特徴的な状態です。高齢による筋力の低下や持久力の減少、抵抗力の低下などがフレイルの原因とされています。一方、過活動膀胱は、膀胱の筋肉が正常に機能せず、意図しない時に膀胱が収縮して尿意を催す症状を指します。これにより、頻尿や尿意をコントロールするのが難しくなります。
フレイルと過活動膀胱には関係がないとされてきましたが、近年の研究により、フレイルを持つ人は、頻尿や尿失禁などの尿トラブルを持つことがわかってきました。

フレイルと過活動膀胱

フレイルを知るためのスコア

フレイルを調べるためのスコアには、色々なものがあります。世界的には、次のようなスコアを使います。

質問項目 スコア スコア範囲
直近4週間で、いつもまたはほとんどいつも疲れていましたか? はい/いいえ 0点または1点
一人で10段の階段を休まずに歩くことに困難を感じますか? はい/いいえ 0点または1点
百メートルかを歩くことに困難を感じますか? はい/いいえ 0点または1点
現在、11種類の疾患のうち5つ以上を抱えていますか?

(高血圧、糖尿病、がん(軽度の皮膚がんを除く)、慢性肺疾患、心臓発作、うっ血性心不全、狭心症、喘息、関節炎、脳卒中、腎臓疾患)

はい/いいえ 0点または1点
直近の体重が5%以上減少していますか? はい/いいえ

日本では、日本人用のフレイル診断の方法が考案されています

改訂日本版フレイル基準(J-CHS基準)1)Satake S and Arai H. Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(10): 992-993
項目 評価基準
体重減少 6か月で、2㎏以上の(意図しない)体重減少
(基本チェックリスト#11)
筋力低下 握力:男性<28㎏、女性<18㎏
疲労感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
(基本チェックリスト#25)
歩行速度 通常歩行速度<1.0m/秒
身体活動 ①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答

※ 5つの評価基準のうち、3項目以上に該当するものをフレイル(Frail)、1項目または2項目に該当するものをプレフレイル(Prefrail)、いずれも該当しないものを健常(Robust)とする。

フレイルに効果のある漢方は過活動膀胱にも効果がある可能性があります。

人参は日本に古くから伝わり、江戸時代には人参養栄湯が病気の回復に用いられました。人参養栄湯は、気血両虚を補う代表的な補剤としてがんの緩和医療に広く使われてきました。がん治療の副作用緩和や食欲不振、疲労改善などに役立ちます。他にも高齢者や術後の全身状態改善、肝硬変の改善、糖尿病性合併症(神経障害)の改善などにも有益です。慢性閉塞性肺疾患(COPD)においても、食欲低下や体重減少、呼吸器症状を改善し、免疫機能を向上させる効果が報告されています。
私たちの研究では、人参養栄湯の使用により、過活動膀胱や尿失禁の症状が有意に改善されたことがわかりました。これらの改善は、フレイルの患者にとって生活の質の向上に繋がる可能性があります。以前の研究でも、フレイルと過活動膀胱の関連性は議論されていますが、NYTの使用による良い影響は報告されています。

 

フレイル・スコアは、他の治療を受ける上での重要な項目です

 

英語で論文をよむ

Cureus. 2024 Mar 8;16(3):e55825. doi: 10.7759/cureus.55825. eCollection 2024 Mar.
Evaluating the Practicality of Causal Inference From Non-randomized Observational Data in Small-Scale Clinical Settings: A Study on the Effects of Ninjin’yoeito
Nobuo Okui
Affiliations expand
PMID: 38463406 PMCID: PMC10924150 DOI: 10.7759/cureus.55825

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