背景:
過活動膀胱の薬物療法には、抗コリン薬とβ3作動薬の2つの種類があります。しかし、抗コリン薬の使用により、高齢者では認知障害や認知症のリスクが高まるとの研究結果があります。そのため、現在のガイドラインでは、高齢者には抗コリン薬ではなくβ3作動薬の使用が推奨されています。そして、抗コリン薬の使用が避けられないときは、ボツリヌス膀胱注射を検討する段階にあります。
方法:
この研究では、65歳以上の過活動膀胱患者を診る医療機関が抗コリン薬のみを処方する割合を調査しました。調査には米国メディケア・メディケイドサービスセンターが提供するデータを使用しました。医師の情報や処方された薬剤のデータを集計し、医療機関の特徴に基づいて抗コリン薬のみを処方する割合を計算しました。
結果:
2020年に過活動膀胱治療薬を処方した医療者は131,605人でしたが、そのうち110,874人(84.2%)の情報が完全でした。抗コリン薬のみを処方した医療者のうち、泌尿器科医はわずか7%でしたが、処方の29%を担当していました。女性医療者の73%が抗コリン薬のみを処方した一方、男性医療者の66%が同様に処方しました。また、専門によっても違いがあり、老年医学を専門とする医療者の中では40%が抗コリン薬のみを処方し、次いで泌尿器科医が44%でした。ナースプラクティショナーや家庭医は、より頻繁に抗コリン薬のみを処方する傾向が見られました。また、医学部を卒業したばかりの医師は、卒業後時間が経つにつれて抗コリン薬の処方割合が減少していました。
結論:
この研究から、医療従事者の特徴によって処方の実践に大きな差があることが分かりました。特に女性医師、ナースプラクティショナー、家庭医、および新卒の医師は、過活動膀胱の治療において抗コリン薬のみを処方する傾向が強いです。このような差を理解し、教育的アウトリーチプログラムを通じて適切な治療法を広めることが重要とされています。