United European Gastroenterol J誌10月号に掲載された研究では、炎症性腸疾患(IBD)患者などを対象に便失禁の診断ツールの有用性を検証している。
2009年1月から2019年12月までのPubMed、Embase、Cochrane Libraryで、便失禁の評価に関するデータを報告しているIBDおよびそれ以外の成人患者に関するあらゆる研究を検索した。各研究の質を、ランダム化試験はJadadスコア、それ以外の研究はNewcastle-Ottawa Scale(NOS)スコアを用いて評価した。とくに注目されたスコアは、WexnerスコアとVaizeyスコアである。
Wexnerスコアは主に肛門括約筋機能障害に関係する症状に重点を置き、固形便、液状便、ガスの失禁の有無などを評価する。VaizeyスコアはWexnerスコアに「便意切迫感」と「止瀉薬使用」に関する2項目を追加したものである。
IBD研究の場合、17件(77.3%)が特異的質問票を使用して便失禁を評価していた。質問票はWexnerスコア(5件、22.7%)がもっとも多く採用され、Vaizeyスコア(5件、22.7%)、IBD特異的QOL尺度(IBDQ:4件、18.2%)が続いた。また、肛門内圧検査は45.4%、肛門管超音波検査は18.2%のIBD研究で実施されていた。
non-IBD研究(4件をのぞき)で、便失禁の評価に特異的質問票を使用していた。Wexnerスコアがもっとも使用されている質問票であり(187件)、続いてFecal Incontinence Quality of Life(FIQL)質問票(91件)、Vaizeyスコア(62件)、Fecal Incontinence Severity Index(FISI:33件)の順だった。検査としては、肛門内圧検査は41.2%、肛門管超音波検査は34.0%のnon-IBD研究で採用されていた。
WexnerスコアおよびVaizeyスコアは、IBD患者でも他疾患でも使用されていた。著者らは、いずれも簡便で信頼性の高いツールであるため広く使用されているとしながらも、患者の生活の質は評価しておらず、患者の意見を取り入れることなく開発されたため患者の視点が反映されていないと指摘している。
最後過去データとの比較がしやすいWexnerスコアを使用して便失禁の評価を開始するよう提案している。このスコアから便失禁が疑われた場合は肛門内圧検査や肛門管超音波検査を実施すべきと結論している。