現在の方法ではメッシュの痛みを正確に評価できない

メッシュの痛み

メッシュの痛み

骨盤臓器脱修復における痛みの問題

骨盤臓器脱の修復に用いられるメッシュは、多くの女性にとって効果的な治療法ですが、術後の痛みがしばしば問題となります。この痛みは、正確に評価されていないことが多く、患者に対する説明が不十分な場合もあります。今回は、メッシュ手術後の痛みの評価方法とその課題について詳しく解説します。

メッシュ手術後の痛みの発生

メッシュを使用した骨盤臓器脱の修復手術は、多くの患者にとって効果的な治療法です。しかし、手術後に痛みが発生することがあり、その痛みは急性から慢性まで様々です。手術部位の炎症やメッシュの移動、組織との相互作用が痛みの原因となることがあります。

痛みの評価と問題点

メッシュ手術後の痛みの評価は一貫して行われていないため、患者に対して「痛みのない手術」と誤解を招く説明がされることがあります。このような状況は、患者の期待と実際の症状とのギャップを生じさせ、医療提供者への信頼を損なう原因となります。

痛みの評価に関する研究

痛みの評価方法についての研究が進められており、BMC Women’s Health誌に掲載された論文では、メッシュ手術後の痛みの評価方法を詳細にレビューしています。この研究では、333の研究を検討し、28の異なる評価方法が特定されました。

論文の詳細

論文では、メッシュ手術後の痛みの管理に関する推奨事項がまだ開発中であることが指摘されています。主な問題点として、痛みの定義や測定方法が一貫していないことが挙げられます。研究の結果、28の異なる評価方法が特定されましたが、特定の測定ツールが適切な精神測定特性を持っているという証拠は見つかりませんでした。

骨盤メッシュ手術に関連する痛みの実態

メッシュ手術を受けた女性の6-12%が、手術に関連する合併症を経験しています。これには、痛みや他の問題が含まれます。特に、手術後の慢性的な痛みは女性の最大30%で発生するとされていますが、正確な有病率はまだ確立されていません。

痛みの影響と管理

痛みを主な指標として移植物が取り除かれた場合、症状が改善または解消されたのは患者の45-86%であり、症状が悪化したのは約14%です。このことから、痛みの管理に関する推奨事項の開発が急務であることがわかります。

痛みの評価方法の詳細

BFLUTS(女性の下部尿路症状を評価するアンケート)
BFLUTSは、女性の下部尿路の症状を特徴づけるために設計された34項目のアンケートです。これは、患者の症状を詳細に把握するための重要なツールとして利用されています。

ePAQ-PF(骨盤底障害に関するアンケート)
ePAQ-PFは、骨盤底障害に関する患者のコミュニケーションを強化するために設計された132項目のWebベースのアンケートです。このアンケートは、症状の幅広い範囲をカバーし、詳細な情報を提供します。

fGUPI(女性の間質性膀胱炎や疼痛性膀胱症候群を評価するアンケート)
fGUPIは、女性の間質性膀胱炎や疼痛性膀胱症候群を評価するために開発された15項目のアンケートです。このアンケートは、特定の症状に焦点を当て、より具体的な情報を収集します。

FSFI(女性の性機能を評価するアンケート)
FSFIは、女性の性機能の多次元的な性質を評価するために開発された19項目のアンケートです。性機能に関連する問題を詳細に評価し、治療の効果を測定するために使用されます。

ICIQ-VS(骨盤臓器脱の症状と影響を評価するアンケート)
ICIQ-VSは、成人女性の骨盤臓器脱の症状と影響を評価するために設計された14項目のアンケートです。このアンケートは、骨盤臓器脱の具体的な症状を把握し、その影響を評価します。

KHQ(尿失禁を経験する女性のためのQOL測定アンケート)
KHQは、尿失禁を経験する女性のための疾患特異的QOL測定として設計された32項目のアンケートです。患者の生活の質に焦点を当て、治療の効果を評価するために使用されます。

研究の結果と推奨事項

この研究では、メッシュ手術後の痛みの概念を詳細にレビューし、多面的な概念定義を開発しました。その結果、痛みは次の6つの主要な要素からなることが示されました。

痛みの開始、持続、頻度
痛みの感覚的な強度
痛みの体の位置
痛みの他の現象論的特性
痛みが日常生活に及ぼす影響
患者の手術やメッシュ埋め込みに対する事前の期待や信念
痛みの影響の詳細
痛みの影響は、物理的機能、性的機能/関係、感情的機能/メンタルヘルス、生活の質の4つのサブカテゴリに分類されます。これにより、痛みが患者の生活に与える多岐にわたる影響を詳細に評価することができます。

今後の研究の方向性

メッシュ関連の痛みの評価に関するさらなる質的研究が必要とされており、条件特有の患者報告結果の測定方法の開発が推奨されています。これにより、手術後の痛みの管理が改善され、より効果的な治療が提供されることが期待されます。

結論

メッシュ手術後の痛みの評価は、現在も発展途上にあります。術後の痛みの正確な評価と管理は、患者の生活の質を向上させるために不可欠です。医師や研究者は、患者の痛みを詳細に評価し、適切な治療法を提供するための努力を続けています。

このように、メッシュ手術後の痛みの問題に関する情報は、患者や医療従事者にとって非常に重要です。手術を受ける前に十分な情報を提供し、術後の痛みの管理についても詳細に説明することが求められます。

 

doi: 10.1186/s12905-022-01977-7.

How is pain associated with pelvic mesh implants measured? Refinement of the construct and a scoping review of current assessment tools

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