メッシュトラブルが、たった2年でも13%も。メッシュなし手術よりもメッシュ手術を選ぶ根拠ない。無作為化比較試験(PROSPECT)

前方または後方脱出手術を繰り返している女性のためのメッシュインレー、メッシュキット、またはネイティブの組織修復:無作為化比較試験(PROSPECT)

メッシュ合併症を伝えるBJOG

目的

本研究の目的は、標準的なネイティブティッシュ修復法と、合成メッシュインレイまたはメッシュキットを使用した修復法を比較することです。具体的には、再発性の前方または後方の骨盤臓器脱症手術を受けている女性において、どの方法が最も効果的かを検討します。

設計

無作為化比較試験(RCT)として設計されました。このデザインは、治療効果を公平に評価するための標準的な方法です。

設定

研究は英国の33の病院で実施されました。この多施設共同研究により、結果の一般化可能性が高まります。各病院は、都市部から地方まで幅広い地域をカバーし、患者の多様性を確保しました。

対象

再発性の骨盤臓器脱症で手術を受けている女性が対象となりました。具体的には、前方または後方の脱出手術を繰り返している患者です。対象となる女性は、さまざまな年齢層や生活背景を持つ多様なグループであり、これにより研究結果の一般化が可能となります。

方法

研究の参加者は無作為に3つのグループに分けられました。一つは標準的なネイティブティッシュ修復を受けるグループ、もう一つはメッシュインレイを使用するグループ、そして最後はメッシュキットを使用するグループです。各グループは、手術後の経過観察を受け、骨盤臓器脱症状の改善度、手術の成功率、術後の合併症の発生率などの主要なアウトカムが比較されました。

結果

1年間の平均骨盤臓器脱症状スコアは、標準治療群とメッシュインレイ群、メッシュキット群のいずれにおいても類似していました。標準治療群の平均スコアは6.6、メッシュインレイ群は6.1、メッシュキット群は5.9でした。平均差(MD)は、標準対メッシュインレイで-0.41(95%信頼区間[CI] -2.92から2.11)、標準対メッシュキットで-1.21(95%CI -4.13〜1.72)でしたが、信頼区間は最小限の重要な臨床的差異を除外しませんでした。

1年後または2年後には、他のどのアウトカム測定値にも有意な違いの証拠はありませんでした。メッシュ暴露を除く重大な有害事象は、1年後において標準治療群で7/55(13%)、メッシュインレイ群で5/52(10%)、メッシュキット群で3/46(7%)でありました。リスク比(RR)は、標準対メッシュインレイで1.05(0.66–1.68)、標準対メッシュキットで0.49(0.11–2.16)でした。

2年間の累積メッシュ露出率は、メッシュインレイ群で7/52(13%)であり、そのうち4人の女性が外科的修正を必要としました。メッシュキット群では4/46(9%)で、そのうち2人が外科的修正を必要としました。

考察

再発性脱出手術を繰り返し受けている女性において、メッシュインレイまたはメッシュキットの使用による脱出症状の違いを示す決定的な証拠は見つかりませんでした。この結果は、サンプルサイズが小さすぎて決定的な結論を出すことはできませんが、将来のメタ分析に実質的な貢献を提供します。また、メッシュ使用のリスクとベネフィットを慎重に評価する必要があることが示唆されています。

将来の研究

本研究の結果は、メッシュインレイおよびメッシュキットの使用が再発性脱出手術において標準的なネイティブティッシュ修復法と比較して優位性を示さないことを示しています。しかし、さらなる大規模な研究が必要であり、特に長期的なフォローアップとより大きなサンプルサイズを持つ研究が求められます。また、患者の生活の質、痛みの管理、そして長期的な合併症の発生率についても詳しく調査することが必要です。

メッシュ合併症

メッシュ使用のリスクとして、メッシュの露出や移動、感染症のリスクが挙げられます。今回の研究でも、2年間のフォローアップでメッシュ露出率が13%という高い割合で報告されており、外科的修正が必要なケースも多く見られました。医師は、手術前に患者に対してこれらのリスクを十分に説明し、インフォームドコンセントを得ることが重要です。

患者の声

多くの患者が、メッシュ手術後に持続的な痛みや不快感を訴えており、その声が研究の背景となっています。患者の一人は、「手術後も痛みが続き、日常生活に支障をきたしている。メッシュの使用は再考すべきだ」と述べています。これらの患者の声は、医療提供者が手術の選択肢を慎重に検討する際に重要な要素となります。

さらに、他の患者も同様の不満を訴えており、手術後の長期的な影響についての懸念が広がっています。ある患者は、「最初は手術が成功したと思ったが、数ヶ月後に痛みが再発し、現在では以前よりも悪化している」と語っています。彼女は、日常的な活動が制限され、仕事にも支障が出ていると述べています。また、別の患者は、「手術前には期待と希望を持っていたが、今では後悔しかない。痛みがひどく、精神的にも疲弊している」と告白しています。

これらの声は、手術後のフォローアップと継続的なサポートの重要性を強調しています。患者は、術後のケアが不十分であると感じており、適切なサポートが提供されないままに放置されていると感じています。患者の一人は、「医師に相談しても、これが普通だと言われるだけで、具体的な解決策を提示してもらえない」と不満を漏らしています。このような状況は、患者の信頼を損ねるだけでなく、治療結果にも悪影響を及ぼします。

患者の声は、医療システム全体に対する批判としても受け取ることができます。手術前の説明が不十分であり、リスクや副作用についての情報が十分に提供されていなかったという意見が多く寄せられています。患者の一人は、「手術を決断する前に、もっと詳しい情報が欲しかった。後からこんなに問題があるとは思わなかった」と述べています。これにより、インフォームドコンセントの重要性が再認識されます。

患者の経験は、医療提供者が手術の選択肢を慎重に検討する際に重要な要素となります。患者の声を無視することなく、リスクとベネフィットを十分に説明し、患者が納得した上で治療を進めることが求められます。特に、メッシュ手術のような複雑な手術では、患者が十分に情報を理解し、自らの意思で治療を選択できるようにすることが重要です。

結論

再発性の前方または後方の骨盤臓器脱症手術において、メッシュインレイやメッシュキットの使用は標準的なネイティブティッシュ修復法と比較して有意な優位性を示しませんでした。サンプルサイズが小さく、結果は決定的ではありませんが、将来のメタ分析に貢献する重要なデータを提供します。メッシュ使用のリスクとベネフィットを慎重に評価し、患者に十分な情報提供を行うことが必要です。

また、メッシュ手術に関連するリスクは、術後のフォローアップケアの質によっても影響されます。患者が手術後にどのようなサポートを受けるかが、治療の成功と満足度に大きく関わってきます。さらに、長期的な視点での研究が求められており、メッシュ使用の安全性と効果をより詳細に評価するためのデータ収集が重要です。

医療提供者は、患者に対して透明性を持って情報を提供し、共に最適な治療法を選択するパートナーシップを築くことが求められます。これにより、患者の不安を軽減し、治療への信頼を高めることができるでしょう。特に再発性の脱出症に悩む患者にとって、適切な治療選択は生活の質に直結する重大な問題です。

以上のように、メッシュ手術の選択肢を検討する際には、患者の声を尊重し、包括的なアプローチでリスクとベネフィットを評価することが不可欠です。

 

ツイート可能な要約

脱出症の手術を繰り返すための合成メッシュインレイまたはメッシュキットの使用をサポートする十分な証拠はありません。

リンク

 

 

英語で読む

Mesh inlay, mesh kit or native tissue repair for women having repeat anterior or posterior prolapse surgery: randomised controlled trial (PROSPECT) CMA Glazener, S Breeman, A Elders, C Hemming, KG Cooper, RM Freeman, ARB Smith, S Hagen, I Montgomery, M Kilonzo, D Boyers, A McDonald, G McPherson … See all authors First published: 06 March 2020 https://doi.org/10.1111/1471-0528.16197 BJOG (2020)

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【当院の海外論文】離散数学を用いて、尿失禁をグラフ化に成功

個別化医療

患者一人ひとりの遺伝情報や生活環境、個々の健康状態を考慮し、最適な治療法を提供する医療アプローチです。当院での研究では、ストレス性尿失禁(SUI)の治療において、個別に取り組む医療の重要性が示されました。

研究概要 最近発表された論文では、グラフ理論を用いた臨床意思決定システムが紹介されています(Sci Rep, 2024 Apr 30;14(1):9900. doi: 10.1038/s41598-024-60407-w)。この研究は、35歳から50歳の女性を対象に、テンションフリーヴァギナルテープ(TVT)手術とヴァギナルエルビウムレーザー(VEL)治療の効果を15年間にわたり比較しました。

研究方法 TVT手術を受けた102人の患者は、Advantage Fit中尿道スリングシステム(ボストンサイエンティフィック社)またはGYNECARE TVTレトロパブリックシステム(エチコン社)を使用しました。一方、VEL治療を受けた113人の患者は、非破壊性エルビウムレーザー(FotonaSmooth™ XS、フォトナ社)で治療されました。また、対照群として112人の患者も含まれました。

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結果と意義 本研究の結果は、SUI治療においてデータ駆動型の個別化アプローチの価値を示しています。個別化による医療は、患者の特定の目標に基づいて治療法を選択することを可能にし、より効果的な治療結果をもたらします。この学際的な研究は、数学と医療の橋渡しをし、臨床意思決定におけるデータ中心のアプローチの重要性を実証しています。

結論 当院での研究結果は、個別化がSUI治療において有効であることを示しており、今後の医療現場におけるデータ駆動型の個別化による治療の発展に寄与するものと期待されます。個別化の導入は、患者の生活の質を向上させ、治療の成功率を高めるための重要なステップとなります。

 


引用 Okui, N. (2024). “Innovative decision making tools using discrete mathematics for stress urinary incontinence treatment.” Sci Rep, 14(1), 9900. doi: 10.1038/s41598-024-60407-w

個別化医療を勧めるアインシュタイン

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